放課後等デイサービス業界に
広く通じる情報を随時配信中!


「子どもを人間として見る」学問の視点に立った療育

2025/01/23

放課後等デイサービス事例インタビュー

「子どもを人間として見る」学問の視点に立った療育

神奈川県川崎市で児童発達支援・放課後等デイサービスを運営する一般社団法人かりなぽーと様にお話を伺いました。

一般社団法人かりなぽーと様は、2022年1月に児童発達支援・放課後等デイサービスの多機能型事業所を開所。小集団のコミュニケーションスキルを向上する療育をメインに活動をされています。
施設を立ち上げた経緯など、代表理事の鈴木様からお話を聞くことができました。

>> 一般社団法人かりなぽーと

  • 実地指導に強い!放課後等デイサービス向け施設運営システム。加算要件を自動でチェックし、最適な人員配置をサポート。業務時間の短縮を実現します!
  • 放課後等デイサービスを運営している会社が開発 療育に特化した業界唯一のソフト HUGの資料請求をする

いくつもの施設立ち上げを経験して独立

インタビュアー(以下:イ)事業内容や施設の概要、開所のきっかけなどを教えてください。

鈴木様(以下:鈴木)2024年11月に法人名を「一般社団法人かりなぽーと」、事業所名を「かりなぽーと菅」に変更しましたが、それまでの約3年間は「一般社団法人心花(こはな)」として児童発達支援・放課後等デイサービス「心花すげ」を運営していました。

「心花すげ」を開所したきっかけは、別法人の放課後等デイサービス「心花」に携わっていたからです。私は当時、管理者として勤務していましたが、急に閉所することになりました。
それでは通っている利用者さんたちが困るだろうと、地域のいろいろな方に相談したところ、現在の施設がある場所がちょうど空いていたこともあり、「そこで始めてみたら?」と勧められました。

それまで私は、自分が独立するなど全く考えてなかったのですが、結果として大学院同期生や信用金庫さんにも後押しをいただき開所しました。
約3年経過して、ようやく施設名を変更するなども含めて2施設目の準備を始めたところです。

元々児童発達支援管理責任者だった私が放課後等デイサービス(以降:放デイ)に務めたきっかけは、平成29年の資格要件の改正です。
福祉の高齢分野の勤務経験が児童分野の勤務経験に変更され支援対象になったことで、ある施設から退職する児童発達支援管理責任者の代わりに来て欲しいと、お声がけをいただいたからです。

それからずっと管理者・児童発達支援管理責任者として施設の新規の立ち上げと立て直しに携わってきました。

イ)施設の立ち上げをいくつも経験されてきたのであれば、ご自身で立ち上げることに不安はなかったわけですね。

鈴木)そうですね。おかげ様で行政とは良い関係を築いています。

イ)開所から運営が安定してきたのはいつ頃でしょうか?

鈴木)落ち着いたのは、開所して8〜9カ月目ですね。なんとかそのラインで収まってくれました。

イ)新しい法人名「かりなぽーと」は、鈴木様が付けられたのでしょうか?

鈴木)最初、職員がフランス語で持ってきた候補から、私が選びイタリア語に変更したのが「カリーナ」です。
車の名前と意味も同じですが、そのままだと商標登録できないので、ちょっと付け足して「波止場に集う子ども達」=「かりなぽーと」にしてオリジナリティを出しました。

イ)すごくおしゃれな響きと、素敵な意味ですね。

『小1プロブレム』解消へ

「子どもを人間として見る」学問の視点に立った療育

イ)施設の特徴や療育の目標を教えてください。

鈴木)私の10年の児童館館長の経験から、いわゆる『小1プロブレム』がとても大きいことが分かっていたので、開所時はそこを取り上げることにしました。

子どもたちに必要なことは、コミュニケーション力の向上、学ぶことの楽しさを知ること、気持ちを伝えるチカラをつけることです。このことを主軸に自己肯定感の向上を図り、自分でやりたくなる力をつける療育をしています。

そのため保護者の皆さんには、小集団のコミュニケーション療育しかしません。と宣言しています。

どうしても1対1の個別療育がいいという方には、徒歩圏に別の個別療育の事業所が2つありますので、「そちらとうちを併用して個別と小集団療育を並行利用してはどうですか。」と伝えます。 

次に子ども支援に深く入るきっかけとなったのが、川崎市の福祉の大学で田園調布学園大学大学院があり、8年ぐらい前に子ども人間学専攻の人間学研究科を開設しました。「子どもを人間として見る」という新しい保育観です。

私は当時たまたま近隣の児童館で仕事をしていて「これは面白そうだ」と、48歳にして大学院に入学して3年かけて修士論文を収め、子ども人間学修士となった経歴があります。

このため、かりなぽーとでは、大学院で学んだ福祉のナラティブ・アプローチ(注1)と保育の二人称的アプローチ(注2)の2つの考えを柱にした「子どもを人間として見る」という子ども人間学の理論のもとに支援をしています。

イ)大学院で学ばれた知識を基にした療育で他の施設様と差別化を図っていらっしゃるのですね。

(注1)ナラティブ(narrative=物語)アプローチ(approach=近づくこと)とは、問題をナラティブ(ストーリー/物語)の視点で捉えて解決を目指すアプローチのことです。1990年代に臨床心理学の論文から誕生した方法。

(注2)大人が子どもに「あなた」 として、二人称的に「かかわること」により、子どもの豊かな世界が見えてくるとされています。

発信することは大切なこと

イ)開所して苦労されたことはありますか?

鈴木)やっぱり集客面は苦労しますね。
川崎市多摩区の人口は20万です。そのうち送迎できる範囲は大体8万人くらいの場所に、この施設があります。

地域紙のタウンニュースには開所時に掲載したり、「子どもの権利」のイベントなどが取材され、掲載されたりしました。

同じ多摩区内でも送迎の範囲外で相談だけの連絡も多くあり、相談支援の入口になっているような感じがあります。
とりあえず、「話しを聞いてみるか」という方が多いです。

イ)SNSにも発信されていらっしゃいますね。

鈴木)SNSは私の想いでやっております。対外的に発信することはやっぱり大切なところですね。

改善はずっと永遠にするもの

イ)職員様との関わりで意識されていることはありますか?

鈴木)基本的に私は現場に入らないようにしています。管理職の仕事は、何かあった時には咄嗟に動ける対応で、常時待機する要員でなければいけないという私の児童館長としての経験からの信念があります。

出来るだけ管理者として直接の療育には携わらないようにしています。そして問題があったら出ていきます。職員は採用して研修や子ども人間学の理論などを理解した職員なので、普段の仕事ぶりについては特に言うことはないです。

業務を任せてしまうことが職員のやる気につながっていると思いますね。

イ)職員様から何か相談されることはありますか?

鈴木)私は、職員に対して朝礼時に時々大きな流れを説明することはしていますが、私の下には10年以上の付き合いの主任がいます。

私が児童館の館長で、彼が職員の時代からなので、「これは相談しなくちゃいけない、これは自分で判断する」などを掴んでいて、対応してくれる人がいます。

イ)長年、右腕として働いてくれる方がいるのは、すごく心強いですね。

鈴木)そうですね。これは本当に心強いです。

イ)今後、改善したいことなどはありますか?

鈴木)改善はずっと永遠にするものです。
たとえば2年ほど前、朝日新聞で「子どもへの性暴力」のシリーズ記事があり、放デイでの相次ぐ性的虐待について、放デイ業界の関係者として意見を求められ、私がそれにコメントした記事が掲載されています。

そうした事例にも着目して職員をどう研修していくのか課題としてあるので、職場研修に力を入れています。

支援の客観化・視覚化

「子どもを人間として見る」学問の視点に立った療育

イ)職員様の指導で気を付けられていることはありますか?

鈴木)今、支援の中で一生懸命やっていることは、支援の客観化・視覚化です。
支援は「なぁなぁでやる部分が多いけど、この一線は越えません。」ということを決めています。

次に、客観化のその一環で「記録は簡潔に書くように」と伝えています。
例えば連絡帳であるサービス提供記録は、写真で分かるものは写真で。それに足りないものを記録として記入するようにと伝えています。写真は子どもたちが家で話したときの補足として分かるように撮ってくださいと言います。

うちは小集団の活動を重視しているので、基本的な活動は同じになります。そこはコピペでよくて、個人的な今日の様子として「お子さんのここが良かったです。」などを付け足して書くように指導しています。

写真は、出来るだけ引きで撮るように頼んでいます。小集団の活動の様子は1、2枚あれば様子は伝わりますが、職員はきっちり4枚入れていますね(笑)。

子どもたちは家に帰って、ご飯の時に親に必ず言うんですね。「今日、かりなぽーとで何をしてきたー」と。上手く説明できないこともあるから、何をやっていたのか分かるような記録を入れるようにと伝えています。

子どもの言葉でも、保護者は写真と説明から想像がつきますよね。

自社の責任と家庭の責任の境がはっきり分かるHUG

イ)前の職場も含めてHUGを使い続けていただける理由はどこにありますか?

鈴木)記録が全部クラウドに保存されていて、どこでも確認が出来ることが強みですね。
例えば私も時々送迎に出ますが、送迎の車に乗っている時でも業務スマホでHUGの記録を確認できます。

送迎管理も便利です。
普段は送迎の車1台にスマホが1台ある状態にしています。車に乗った時刻、家に着いて子どもが降りた時刻を管理できていることが一番の利点です。

小学校3、4年生になってくるとお母さんも仕事や残業などでいないことがあります。
子どもに鍵を持たせている家庭に対応するときは、子どもが家に入って鍵を閉めた時に「到着」ボタンを押すようにしています。そこで保護者へ通知されるので、そこまでがうちの責任範囲で、以降がご家庭の責任範囲になると保護者と確認しています。

自社の責任と家庭の責任の境がはっきり分かると明確に分けられます。そういうシステムはHUGだけじゃないかと思います。

イ)保護者様も通知が来ることで安心されますね。

鈴木)そうですね。最近はお父さんが在宅で、お母さんが外で会社にいるケースもあります。

お父さんに判子をもらってから「到着」ボタンを押せば、お母さんのスマホに通知が届くので、子どもが自宅に着いたことが分かり安心されるようです。

イ)施設と家庭の責任が明確化でき、安心につながることが大きいのですね。

鈴木)送迎で自宅に着いた時に保護者がいなくても、子どもが家の中に入って鍵を閉めてくれれば、そこまで確認したことを「見える化」する。
客観的に分かることは、強いと思います。

サービス提供の開始や終了が明確化できることは業務上必須

イ)他にHUGの良い点はありますか?

鈴木)まずは、どこまでが支援なのか、つまりサービスの提供開始と終了が明確化できることが良い点ですよね。先ほどの送迎の所もそうですが、入退室時間が記録できることも業務的に必須だと思います。

個別支援計画が書けることもいいことですね。

あと、常勤の心理指導職員がいますので、サービス提供記録の共有欄のケア記録には、心理指導職員が支援の気になったことを書いています。本当に引き継がなければいけないことはそちらを利用しています。

イ)ご意見・ご要望などはありますか?

鈴木)今、置き去り防止ブザーが義務化されたのでこともあり、運転手は印刷された送迎票を紙で、添乗員は業務スマホでHUG画面を見ています。

置き去り防止の対応は運転手の仕事なので、見落としがないよう運転手がバス送迎車を離れる前に車内に児童を残していないか確認しながら別紙にチェックしています。

運転者記入欄の最後に運行完了時の運転手用のチェック項目として、「公式点検やりました」など、紙上用のチェック項目を充実するとか、カスタマイズして印刷して利用できるなど、運転手用に充実すると嬉しいですね。

イ)貴重なご意見ありがとうございます。ご要望として社内に伝えさせていただきます。

鈴木)もう1つの要望は、国保連請求で返戻が出た時の再請求です。
再請求だけ切り出しできないか、返礼があった人の登録がピンポイントでできればと思いました。

イ)すごく貴重なご意見ですね。社内に持ち帰り検討します。

インクルーシブ教育の取り組みに不足している高校進学支援

「子どもを人間として見る」学問の視点に立った療育

イ)最後に今後のビジョンなどをお聞かせください。

鈴木)障がい児支援の分野で足りてないのは、中高生向けの放デイです。圧倒的に足りていないので、ここにどうスポットを当てていくのかが大きな課題です。

川崎市には「子どもの権利条例」があって、その中に担当する障がい児の部会の中で上がった意見に、支援級からの高校進学問題がありました。

そもそも小中学校の支援級に通っている子に対応するような高校の支援級が少なく、進学先がなくなることが問題と考えています。

国が進めるインクルーシブ政策の中で神奈川県は、インクルーシブ教育の取り組みの一環として、高校支援級体制を作る動きが出てきていますが、まだまだ対応しきれていません。

このことを考えて2施設目は、今の施設の小集団療育とは全く違う個別療育にしようと思っています。パソコンやeスポーツを通じて外出できるような体制にしていきたいです。

たとえば不登校の子が外出できる体制、あるいはパソコンで生計を立てられる技術を身につけてもらうためです。例として動画編集の力を付ければ、就労支援B型とはまた違う単価が生まれてくるのではないでしょうか。

今の施設はアナログチックですが、逆に低学年の時代にアナログで過ごしきれなかった子ども達はデジタルに頼らざるを得ない状況です。デジタルとどう共存していくのかを考えていかなければなりません。

イ)2施設目も楽しみですが具体的にはいつ頃になりそうですか?

鈴木)職員が集まればというところまで来ています。
女性職員がいないと女の子の対応が出来ないので、ハローワークに相談して女性限定の採用募集をかけたところです。

イ)あと少しですね。

(注)その後、女性職員の採用が決まり、2月1日に開所することが決定しました。

医療機関連携と療育の取組

「子どもを人間として見る」学問の視点に立った療育

鈴木)かりなぽーとでは、小児科・児童精神科『clinic WIZ のぼりと・ゆうえん小児科』(以下:clinic WIZ)と連携しました。

clinic WIZの加久 翔太朗院長は、医学的な診断、投薬の必要性の評価、必要な児童に対する心理評価やカウンセリング、神経学・精神医学の専門的な見地からの保護者へのアドバイスを行われており、同院を利用している児童がかりなぽーとを利用しているケースについては、保護者の承諾を得たうえで療育情報の共有を図ることとし、現在数例の情報を共有しています。

かりなぽーとによる毎日の療育で児童の療育や観察。clinic WIZによる診察で子どもの成長や課題を確認という役割分担をしていきたいと考えています。
この連携がかりなぽーとの療育を、より客観的に子どもの育ちを確認できるようになると考え、実践していこうとしているところです。

イ)素晴らしい連携ですね。
本日はお忙しいところ貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。

さいごに

弊社が提供している「HUG」は放課後等デイサービス運営会社が開発したソフトウェアです。

請求業務はもちろん、個別支援計画やサービス提供記録の作成から管理も簡単に行えます。
実際にHUGをご利用いただいている放課後等デイサービス事業者様の感想をご紹介していますので、請求ソフトや管理システムの導入を検討されている方はご参考くださいませ。

HUG導入のお客様の声はこちら

お電話でもご案内も受け付けております。
お気軽にお問い合わせください。
052-990-0322
受付時間:9:00~18:00(土日休み)

  • 放課後等デイサービスを運営している会社が開発 療育に特化した業界唯一のソフト HUGの資料請求をする
  • 開業スタートダッシュパック 内容を詳しく見る

メールマガジンの登録

新着記事や放課後等デイサービスに関するお役立ち情報をお届けします!

メールマガジンの登録はこちら


アクセスランキング
カテゴリ

最新の記事
話題のキーワード




本件に関するお問い合わせ先:株式会社ネットアーツ TEL:052-339-1222 E-mail:tsales@netartz.com
本記事の転載・無断複製を禁じます © Netarts Co., Ltd. All Rights Reserved.