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2024/03/13
放課後等デイサービス事例インタビュー
佐賀県鳥栖市で重症心身障害児を受け入れる多機能型事業所を運営する一般社団法人のミルキーウェイ様にお話を伺いました。
一般社団法人のミルキーウェイ様は、2016年に『多機能型事業所ミルキーウェイ』を開所され、現在は佐賀県鳥栖市と福岡県小郡市で2つの施設を運営されています。
施設を立ち上げた経緯や重症心身障害児の受け入れについて、理事の寺澤様からお話を聞くことができました。
インタビュアー(以下:イ)自己紹介をお願いします。
寺澤様(以下:寺澤)一般社団法人ミルキーウェイの理事 寺澤友子です。
2016年に一般社団法人ミルキーウェイを作り、その年の9月に申請の許可がおりました。それ以来、重症心身障害児(以降:重心児)を受け入れる多機能型事業所ミルキーウェイを約7年半、ミルキーウェイキッズを約6年運営しています。
私はもともと普通の会社員でした。産休後は会社に復帰する予定でしたが、産まれた双子のうち一人は医療的ケアが必要な重心児でした。
会社に復帰するためには、看護師がいて医療的ケアをしてくれる施設に子どもを預けなければなりません。
保育所に子どもを預けられないか相談に行きましたが、「そんなに重い障がいがある子どもがいて、会社に働きに行くのですか」と言われてしまいました。
当時は放デイなどの仕組みが始まったばかりのころで認知度は低く、重心児を預けて働くことはとても難しい時代でした。
それでも療育センターに子どもを預けることができたので、一度は時短で会社に復帰しましたが、小学校に上がるタイミングで、「医療的ケアが必要な子どもには親の付き添いが必要です。」と特別支援学校に言われました。
その当時、特別支援学校と療育センターを送迎してくれる仕組みもありません。
それに療育センターに預けられるのは当時は小学3年生までだったので、「困っている人は他にもいるはずだ」「無いなら施設を作るしかない」と思ったのをきっかけに起業しました。
イ)全く初めてのことだったと思いますが、何から始められましたか?
寺澤)インターネットで調べた「施設の立ち上げマニュアル」などを参考にしました。
今見ると、それは訪問看護ステーションを併設する重心型の施設の立ち上げについてのものでしたが、必要な流れは分かりました。
また、他の施設も見学させてもらい、自分でわからないところや細かいところについては質問していました。
イ)マニュアルを見ながら進めた中で、どんなことに困りましたか?
寺澤)当時は難しくても、やる気に満ちていたので何とか頑張って進めていましたが、テナントを貸してもらえないことが一番困りました。
会社を立ち上げたばかりで信用もありませんし、障がい児施設は「うるさいんでしょ」などイメージが先行して受け入れてもらえませんでした。
何軒も回り、古民家を改装して利用することになりました。
イ)他に苦労されたことは?
寺澤)集客は難しかったです。同じ境遇のお母さんは周りにいたのですが、実際に自分の子どもを預けるとなると別問題で、実績がないところに我が子を預けてくれる人は少なかったです。
イ)そんな中で、どうやって集客をされたのですか?
寺澤)まずは大きな病院を回りました。地域連携室などにチラシを持参して挨拶に行きました。「退院する方で受け皿がなくて困っている方がいれば」というお話をさせていただきました。
また、放課後の利用が見込まれる特別支援学校など関係機関を回りました。でも最初の半年間は利用者が集まらず、資金がかなりピンチでした。
イ)では、半年後は徐々に利用者が増えたわけですね。
寺澤)そうですね。保護者さんとしては大切なお子さんを預けるので、どんな施設なのか様子を見られている状態だったようです。
誰かが体験や施設見学をして「良かったよ」など保護者のネットワークで口コミされると、ようやく他の方たちも利用してみようかなと考えられているようです。
その方たちの口コミがまた広がるんですね。「サービスがいいよ」「従業員さんの感じがいいよ」となると利用者さんは増えますが、逆のこともあると考え、大切なお子さんたちを「私たちを信頼して預けていただけているんだ」と身の引き締まる思いでもあります。
イ)サービス内容などは何を基準に決められたのですか?
寺澤)私自身がして欲しいサービスが基準だったので、まず送迎サービスです。
医療的ケアには吸引器など必要な物品が多く、薬もあり荷物がたくさんで移動が大変だったので、送迎は必須のサービスでした。
新規開所ですが、職員さんの面接の際に「こうしたサービスをしていきたい」と想いをお伝えしているので、そのまま提供したいサービスを受け入れてもらいました。
イ)重心型ならではの取り入れた支援はありますか?
寺澤)視線入力(注1)やスイッチなどのICT機器を導入しています。
重心のお子さんの中には、発語ができなくて意思を伝えるすべがない重度の子もいます。何かできないかと探していたら、「画期的なものがあるらしい」と同じ立場の保護者さんや支援者のネットワークから情報をもらいました。
保護者さんたちは新しいものに敏感なので、早い段階で視線入力について先生をお招きして研修会を開きました。
定着まで難しいことも多いですが、保護者さんたちが望むことをいち早く取り入れていくことは大事なことだと思っています。
イ)ネットワークとは、コミュニティがあるのですか?
寺澤)Facebookもありますし、全国の同じ境遇で重心児を持つ保護者の全国ネットワークがあります。
支援者としても全国重症児者デイサービス・ネットワークにも入っているので、アンテナを張るように努めており、勉強会などにも参加しています。
(注1)島根大学総合理工学部 伊藤史人 研究室が開発した視線入力のソフトウェア「EyeMoT」(「Eye Movement Training」)。ゲームを通じて視線入力のトレーニングを行うことができます。専用の機器を用いて視線を使った視線入力は、パソコンを操作して意思を伝えることができ、障がいの程度や状態を問わずに生活の幅が広がると期待されています。
イ)他の施設との差別化は?
寺澤)重心児だけではなく、重心児以外も受け入れていることです。
重心児で症状が重い子は、話すことは難しいですが、他に話しかけてくれる利用者さんがいることで刺激になることもあります。
重心児でお話されるお子さんについても、お話しながら遊べるお友だちがいると交流になってとてもいいですね。
保護者さんたちからは「いろいろな子と関われるところがいい」と言われています。
イ)どんな活動が喜ばれますか?
寺澤)お出かけですね。家族で重心児とお出かけするのは大変なことなので。
重心児については特に自分で何かを取りに行ったり触ったりすることが難しい子が多いので、感覚遊びも行っています。いろいろなものに手や足などで触れて感覚を刺激する遊びです。
クッキングもコロナや感染症が流行している中では難しい面はありますが、人気です。
例えば、お団子を作ることで手の感触、餡子を味見することで食感や匂いなどいろいろな情報を受け取ることができます。
イ)サービス提供記録にはたくさんの写真が載せられていますね。
寺澤)職員さんそれぞれで上手に撮影してくれています。写真があると保護者さんは安心されますし、施設での様子がわかると喜ばれます。
以前に職員と、「HUGの[マイページ]に、サービス提供記録の写真を利用したアルバムが作れたらいいのにね」と話したことがありましたね。
イ)なるほど、そうですね。スクロールすると成長記録になる感じですね。会社に伝えておきます。
寺澤)ぜひ作ってください。お願いします(笑)。
イ)症状が違うので気をつけることが多いと思います。職員の方の情報共有はどうされていますか?
寺澤)症状はもちろん持ち物から個別の対応が必要なので、個別に「ケアリスト」を作っています。
身体の特性で「骨折しやすい」などの情報、姿勢や着換えで気をつけること、好きな遊びなどを記載しています。それを間違えないように写真も付けて一枚にまとめて、確認しながら支援しています。
イ)職員の方は、経験者が多いですか?
寺澤)少ないです。大人数を診る看護経験はあっても個別になるとそんなに多くはいません。うちの方針は「一人一人に対応すること」で、個別に関わることを大切にしています。
個別のケアなどの生活介助は、家庭では保護者さん(主にお母さん)が行っていることなので、最初は保護者さんのやり方を忠実に守ってケアをしていきます。
看護師さんたちは、医師の指示書を基にした看護手順書を作成していて、それを元に医療的ケアを行っています。
イ)採用はどうされていますか?
寺澤)求人に関しては、ハローワークや職員さんの紹介がメインです。急に採用が必要になったときは、人材紹介会社や派遣会社も利用しています。
イ)送迎もありますが、加算なども積極的に取得されていますか?
寺澤)基準人員だけでは送迎まで人が回らないので、人を採用していくしかありません。その分、工夫してフルに加算を取れるように管理しています。
イ)利用者が絶えない要因はどこだと思いますか?
寺澤)まだまだだと思いますが、重心児は体調の変化も大きく入院したりなどキャンセルも多いので、キャンセル待ちの案内を積極的にしてきました。おかげであまり利用率が下がらずに済んでいます。
イ)利用を促す働きかけはどのようにされていますか?
寺澤)だいたい曜日を固定して利用されていますが、「それ以外でもご相談にのります」と保護者さんたちに伝えています。
重心児を持つ保護者さんは自由になる時間がとても少ないです。利用予定ではない日に病院に行く用事ができたり、身体がキツイときもあります。きょうだいの用事も出てくるので、「気軽に言ってくださいね」と声を掛けています。
例えば、子どもの定期的な通院があり、たいていは学校に行かない日でもあります。
そんな日に「少し早く来ても大丈夫ですよ。受け入れますよ。」と、通院で疲れたお母さんたちの気持ちを考えて、私自身がして欲しいことを提供するようにしています。
イ)相談しやすい雰囲気、保護者の立場を考えた行動が利用率の安定につながるのですね。
イ)HUGのご利用につながったきっかけを教えてください。
寺澤)個別支援計画を書き込めるシステムやアプリを探していました。
パソコンが苦手なスタッフは、WordやExcelに個別支援計画を入力して、枠など体裁が崩れてしまうと分からなくなり、一度崩すと戻せなくなるんですね。
HUGは書くところが決まっているし、個別支援計画が流れに沿って作成できるのがいいと思いました。
イ)他に利用してみてよかったところはありますか?
寺澤)サービス提供記録に写真が載せられるところがいいですね。
子どもの様子は撮影するたびに写真を載せています。
ケア記録も写真で載せています。ラミネートした「ケア記録一覧」に手書きで✔付し、その日の最後に撮影してサービス提供記録に載せています。
それ以外のことは文章を入力します。効率的に入力できるようにと職員さんたちが考えてくれました。
イ)送迎管理は利用されていますか?
寺澤)以前は手書きしていましたが、今は車両を管理するために利用しています。
お迎えボタンを押すだけなので、しっかりと活用できています。
イ)さいごに今後のビジョンについてお聞かせください。
寺澤)今いる利用者さんたちが地域で生活できるような事業展開をしていきたいので、放デイや児発をこれ以上作る予定はありません。生活介護をミルキーウェイキッズで4月から始める予定です。
相談支援を始めた時にHUGは相談支援に対応していなかったので、違うシステムを使っています。
生活介護はまだ未定ですが、手書き対応になるかもしれません。生活介護でもHUGが使えるようになると嬉しいですね(笑)。
あとは、訪問看護なども併せて実施できれば地域のお役に立てるのではないかと検討しています。
イ)生活介護ですね。頑張らせていただきます。
重心型放課後等デイサービスはまだまだ少ないので、大変勉強になりました。本日は貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。
弊社が提供している「HUG」は放課後等デイサービス運営会社が開発したソフトウェアです。
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実際にHUGをご利用いただいている放課後等デイサービス事業者様の感想をご紹介していますので、請求ソフトや管理システムの導入を検討されている方はご参考くださいませ。
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