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相談支援専門員による個別支援計画作成講座(3)|個別支援計画作成のプロセス

2020/07/03

相談支援専門員による個別支援計画講座

相談支援専門員による個別支援計画作成講座(3)|個別支援計画作成のプロセス

みなさん、こんにちは。相談支援専門員の大場です。前回は、個別支援計画の原案を作成する前に必ず行う「アセスメント」についてご紹介しました。


第3回では、個別支援計画作成のプロセスということで、原案作成のコツや目標の設定についてお話します。

個別支援計画の原案は本人の言葉をそのまま書く

私が原案を作るときに注意していることは、『本人の言葉をそのまま書いていく』ようにしています。
本人の言葉をそのまま書いていくことで「本人がどういう風に言っていたのか」「どういう表現をしていたのか」を改めて自分たちで確認することができます。

書き方としては、本人が言ったことは「本人」、お母さんだったら「お母さん」と書くようにし、誰が言ったのか分からないようには絶対にしません。
表現もそうですが、原案で誰が話したのかがずれてしまったり記載がないと、「誰」がそれを発し、「誰」がそれを言ったのかが分からなくなってしまいます。
そうすると支援の持っていき方が全然変わってきてしまうんですね。
本人がそれを言ってるのであれば、本人の目線でどう支援をするのか考えます。
また、ご家族が話されたことであれば、支援内容も変わってきますね。
他の支援者から見た時に「○○ちゃんがこうやって言ってたんだ」「お母さんがこうやって言っていたんだ」と共通認識を持つことが重要です。


私が重心児の方の原案を作成していた時のことです。
本人が「あ~」とか「う~」としか言っていなくても、そのまま書いていました。
言葉として聞きとれない場合でも、そのまま書いていました。
例えば、目だけしか動かさず、瞬きだけでも、「まばたき3回」や「う~」など細かく書くようにしてました。
こういう些細な内容を残しておくと、「この表現はもしかしたら嫌いなのかな」と分かったり、本人が嫌な表現を聞いた時に「あれ、これって違ったんじゃない?」などのすり合わせになります。

これが、ひとつのアセスメントにもなるので原案は徹底的にやっていました。

例えば「このスタッフはよくご本人と話が通じているよね」となった時に、他のスタッフたちは目をパチパチしたから良い時だと思っていたのですが、そのスタッフから見たら「それってそんなに良い時ではないですよ…」「いいときってもっとこういう感じですよ」となることもあります。

原案の時点でそこをたくさん出しておくと「そうなんだ!」「じゃあここもしかしたら考え直したほうがいいかもね!」となることが多いです。
そのため、本人の反応などはくまなく書いておいたほうがいいと思います。
みんなに見てもらって「ここはこうだと思います」「ここはああだと思います」と会議の時に意見を出してもらい、「そうなんだ!じゃあここはこうしよう!」と書くようにしていました。
練り直すときの材料としてはものすごく助かりました。


言葉として発することができる子なら会話の中で出たワードを拾うことができます。
ただ重心児の子だと、お母さんが「~ちゃんこれどう?」と聞いたときに、「あ~」とか「う~」といった反応になることが多いです。
本人がいないところでアセスメントを作ることはありませんので、基本的に本人には「こういうこと困ってるの?」とか「こういうことやりたいと思ってるの?」と確認し、どんな風に切り返していたかを残してます。


支援計画をうまくたてられない原因の一つとして、自分の中だけで考えようと思うから難しくなっているのだと思います。
本来支援計画は本人のものなので、私たちが考えるのは支援内容なんですね。
目標やニーズは本人から出たものを入れてあげればいいだけで、それをどうやって支援内容に落とすか、その中で、色々どういう表現にしたらいいだんろうと考えるから支援計画が作れない。
本人が分かる形、ご家族が分かる形で作るのが支援計画なので、原案の時点ではストレートに聞いた内容を入れればいいのです。

ただそのままぐちゃぐちゃの文章だとご家族や支援者に伝わらないので、そこは管理者が整理して作りなおせばいいと思います。

『できた』か『できなかった』かで判断できる達成目標を

私は達成目標を考える時は、まず短期目標をクリアできるレベルで一度こちらから提案します。
できなかったという失敗体験ではなく、できた!という成功体験の積み重ねを目指すと良いと思います。

例えば計算ができる子がいて、じゃあなんの計算ができるのか、足し算なのか引き算なのか等、具体的にできるものをどんどん作っていく。
具体的な達成目標は、ピンポイントで『できたのか』『できなかったのか』を判断できる内容にしてほしいですね。


モニタリングの時に、「ほぼ達成」としてしまうケースがあります。
「ほぼ達成」というのは、お子さんをしっかりと見れてないからだと思うんですね。
見れていたら達成か未達成になるはずだと思います。
短期目標と長期目標が具体的でなかったため、モニタリングの時にほぼ達成という結果になってしまいます。

計画を立てる際、こちらが考えすぎてしまうと、本人ができるかどうか分からなくなってしまいます。
本人がアセスメントで話していた内容を全部書き残し、最初の原案に入れておくと達成した時の根拠になります。
また、どういうところが良かったのかと振り返ることもできます。

一般的な目線で見始めると、結局その子自身を見ていないようになってしまいます。
例えばADHDの子がいたとします。
達成目標を立てる時に「ADHDってこういう特性があるので、支援計画はこんな達成目標にしよう」としてしまうと、モニタリングの時には「ほぼ達成」ばかりになってしまうでしょう。
それは一般的な目線で見てしまっているので、その子自身を見れていないし分かっていないからです。
「〇〇ちゃんにはこういうことができるようになると良いね!」からたてるのがベストです。

「その子」の支援目標を立てようと思ったら、その子を見るので、達成できたかできなかったかしかなくなります。
ほぼ達成というのは絶対ありえないんです。


本人にとって「ほぼ達成」ほど、もやっとするものはありません。
達成できていなければ「次こういうことをやりましょう」、達成できていたら「じゃあ次の目標はこれにしましょう」とできます。
しかし、「ほぼ達成」だと、達成はできていないので、次の半年、もう一度同じことをすることになります。
それだとその子の成長は一切ないですし、同じように見るので、また次も絶対「ほぼ達成」になってしまいます。

達成目標は具体的にピンポイントにして「できるかな、できないかな、でもできそうだな?」という方を選択して入れていく。
支援内容はそれに沿って具体的に入れていく。
そうすれば、モニタリングの時は「できていた」か「できていなかった」をチェックできるようになるのです。
「できる」か「できなかった」しかありません。

お母さんもハッピーになる計画を

相談支援専門員による個別支援計画作成講座(3)|個別支援計画作成のプロセス

お母さんたちの多くは「まあまあできたかな」「ほぼほぼ」とよく言われます。
「できた」となると支援が終わってしまうので、お母さんたちの中では「できた」と言いたくない人もいるみたいです。
お母さんたちは「できた」と思いたいけど「できた」と言いたくはないので「う~ん、ほぼほぼ?」と言ってしまうのです。
お母さんがそうやって言っていたから「ほぼ達成」ではありません。
「ほぼ達成」にならないように「達成」するか「達成しない」かにできるような支援計画にすることがポイントです。

またお母さんのことを考えてその子の目標を考えることもありますし、お母さんのハッピーライフの計画を立てることもあります。
例えば「3か月後に美容院行きましょう」とか、「この日は朝からお化粧する日を作って一日お出かけしましょう」とかすることで、お子さまも自立できるしお母さんも自立できるようになります。
特に中学生くらいのお子さんがいるお母さんは1人でやっていくしかなかった等で共依存になりやすくなってしまうので、お母さんの計画も作っていました。

児発管は、お子さんがここまでいけますと見通しを立てると、お母さんもお子さんから離れやすくなります
お子さまの手が離れることで、お母さんはお母さんで自分の事ができ、別の事を考えられるようになりますし、小さいお子さんのお母さんだと「次の子どうする?」と考えることもできるようになります。

お母さんに「気付いたら余裕持ててきたな」とか「今度ここに行ってみようかな」と思わせるんですね。
こちらは全力で黒子になり、お母さんが自分で動いているからこういうことできたんだと思ってもらう。
自分でできたと思ってもらわないといけないので道筋は太く投げるようにします。
それをお母さんが覚えていて「あれ、手が空いたな」とか「この子がこんなことできるようになったら私はこんなことができるようになる」と思わせるようにしています。

お子さんの計画がどんどん進んでいく姿が見えていたら、お母さんも考えやすいです。
「ほぼ達成」でお子さんの計画が溜まっていたら見通しは立ちません。
「できた」→「できた」→「できた」と進めて行き、お母さんにお子さんにはまだまだやれることがあることを思わせてあげてください。
そして手が離れていくというイメージを持ってもらえるといいと思います。

お母さんから指摘があった時

作成した支援計画の同意を頂く時、特に原案の時にお母さんから指摘を頂くことがあります。
原案もサインがいるので、その時に意見があれば変えてもらっていいと思います。
支援内容を具体的にして頂いたりそういうところを修正してもらえばいいかなと思います。

お母さんの意図したことが入っていないとしたら、最初に説明した時に話をちゃんと聞いていないだけです。
ですから、それがないようにアセスメントを行いますし、それがないようにするため、日々の関わりが重要になります。
関係性ができていれば「なんでこんな風になっているの?」と言われて修正することもないと思います。

目標のステップアップについて

最初の長期目標の時点では大きな目標をたててしまっていいと思います。
その間に達成できそうな短期目標を入れどんどんと達成させていく
お子さんは特に「できた!」というのが嬉しいので、そこを増やしてあげると「次はこんなこともやってみる?」と提案しやすくります。
達成感が積み重なれば、本当に苦手なことでも「やってみる」と言ってくれやすくなります。

次の支援計画を立てる時に元々のアセスメントも見つつ、特性に合わせて達成できるものを少しずつたてていくと、その子の為にもお母さんの為にもなります。

担当者会議について

事業所でやる会議は基本全員で参加した方が良いです。
1人でも参加できていなかったら、会議の内容は誰か1人が伝えるのではなく3人くらいから伝えてもらった方がいいでしょう。
管理者から伝えると管理者目線で伝えてしまいますし、1人のスタッフだとそのスタッフの主観が入った内容になってしまいます。
ですから3人~4人で伝えてもらうようにするとばらつきなく伝わると思います。

主な議題はこういったことを話されるといいと思います。
・現状どういうふうにきているのか
・どのような利用をしているのか
・事業所内だったらどういう利用をしているのか
・何日来ているのか
・なぜその日数なのか

流れとしては、マイナスなことを先に話し、今後どういう風に改善していくかを話します。
マイナス、プラスの話をして、最後に総合的にどのようにしていくか考えます。
ただ漏れがないようにやってほしいので、何も話していない人がいないように、全員が話すようにしてください
もしその人が別の人と同じことを考えていたとしても、同じ内容をもう一度話してもらうようにしています。
同じ内容でも感じ方が違うので、管理者も「この人はこういう捉え方をするんだな」とスタッフのことにも気が付くことができるようになります。

本番の支援計画を立てるコツ

相談支援専門員による個別支援計画作成講座(3)|個別支援計画作成のプロセス

本番の支援計画では、自分の表現を使わないことが一番きれいに書けるコツかなと思います。
会議の時に、絶対誰かが良い表現をしています。その時の表現を使ってみてください。
そもそも原案そのものが大体本番用に来るので、そこまで変える必要もないです。
もし変えるのであれば、「いい表現聞いたな」とか「これくらいの目標が設定しやすいかな」となった時だけでいいと思います。
ただ本人や誰かが言ったからと言ってニーズの部分は変えないでください。

あとは福祉的な表現がないかを確認し、あれば削除してください。
原案の時点では最初からないはずなんですが、会議の時点で表現が福祉的なものに変わっている可能性があります。
それが入り込まないように注意して気を付けてもらえればと思います。
最初の本人目線で作っている原案であれば、より具体的にするよりも簡潔にするぐらいで、本番はそこまで変えなくてもいいと思います。

作り慣れて来ると、書き方とか表現の仕方とか少しずつできるようになってくるでしょう。
そのまま言葉の語尾だけをきれいにして原案を作り、それを具体的に支援の仕方をどうするかだけをしっかり決めてもらって書いてもらえればいいです。

そのままの言葉をクリアできる目標に変換し、それを計画にして、それに対して会議で話し内容を本番にすれば完成です。

回数を重ねていくことで質も良くなり、見方も変わります。
何よりもお子さんと一緒に自分も成長していきます。

まとめ

個別支援計画は6か月後に作り直さないといけないことはありません。一か月ごとに見直してしまってもいんです。
「あれ、よく見たら違ったぞ」となれば作り直していけばいいだけなので、半年に一回じゃなくても別に直したいときに変えればいいだけです。
ある程度見返してみて少しずれているって気が付いたら作り直してみてください。
そうすれば、より良い計画書を作ることができます。

さいごに

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