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2020/10/26
相談支援専門員による個別支援計画講座
みなさん、こんにちは。相談支援専門員の大場です。
前回は、相談支援専門員目線で気を付けてほしいことについてご紹介しました。
第5回では「モニタリングと計画の見直し」と題し、実際にモニタリングを行う上で気を付けたいことや、意識すべき重要なポイントなどをご紹介します。
モニタリングは、お子さん本人の気持ちを反映して作成された個別支援計画をもとに現状を振り返るための工程です。「目標は達成できたのか?そのために立てた支援はちゃんと合っていたのか?」といったことを皆で確認します。
また、時間の経過によって本人の気持ちが変化すると目標も変わるため、それに合わせて支援内容をガラッと変えてしまうこともよくあります。きめ細かなフォローや柔軟な姿勢が求められますが、このモニタリングそのものが子どもの今後に繋がるとても重要な役割を担っています。
基本的にモニタリングは6か月に1度の個別支援計画の見直しに合わせて定期的に実施することが決められています。
しかしそこの時期にはあまりこだわらず、なるべくお子さんに合わせて臨機応変に実施するのがおすすめです。特に初めてのお子さんの場合モニタリングの回数を重ねることで、よりお子さんに即した計画が立っていきます。
私の場合を例に挙げると、相談支援のサービス等利用計画は、1回目に計画案を立てるときや初めて放課後等デイサービスを利用する子の場合は、毎月モニタリングを行っています。理由は、施設に慣れてきた頃にやりたいことや困りごとが出てきたり、お子さんの置かれている環境や家族の状況が変化したりする可能性が高いからです。
お子さんの状況をきちんと把握しておくためにも、まずは1か月ごとにモニタリングを行い、そのあとは様子を見ながら3か月後や半年後といった通常の設定期間に戻していくのがベストでしょう。
モニタリングを行うときに最も大切なのは、「計画を立てたときから本人や環境に何か変化はないか」を確認することです。
◆本人の環境に変化はないか?
◆本人のニーズは変わっていないか?
◆支援内容や支援方法が変わっていないか?
◆そもそも個別支援計画が間違っていないか?
本人の環境の変化には、以下のようにごく些細なことも含まれます。
「(本人が)通所するようになった」
「最近お父さんの帰宅時間が変わった」
「コロナの影響で家族が在宅勤務になった」
「いつも送迎してくれたスタッフが変わった」
お子さんはあまり気にしていないように見えても、本人を取り囲む環境は確実に変化しています。
個別支援計画を立てる際はイレギュラーな事を想定していないため、何か変化があればそのイレギュラーを含めた計画内容に修正しなければなりません。変化後の様子はどうか、そのことが何か影響を与えていないか、などしっかりとモニタリングを行いましょう。
また、お子さんが最初に「こうなりたい」という思いを持っていても「達成したから次のステップにいきたい」とか「いっこうに出来ないので諦めてしまった」と心境が変化することも起こりえます。ただそうした本人の気持ちの変化というのは、アセスメントや会議での話し合いで変更されることが多いです。
そのため、それよりもモニタリングで注視して欲しいのが「最初はこう思っていたけど違うかもしれない」「本人は出来ないと言っていたことが出来ている」といった、事実と認識にズレが生じていないかどうかの確認です。
そうした認識のズレは、自分たちの視点が違っていた、あるいは本人や保護者の方が話してくれた内容を把握できていなかった、というアセスメント不足も要因になります。
モニタリングでは利用者さんの思いの変化というより、「こちらが立てた個別支援計画に間違いはないかな?」という部分に着目して行いましょう。
モニタリングを行う際には、本人や保護者の方、スタッフなどみんなで参加することを推奨しています。
本人も参加させることは現状少ないかもしれませんが、自分のことなのに勝手に話を進められるのはお子さんにとっても不本意ですし、何より本人が一緒に居ると確認作業を行う上でも好都合です。
それに、「計画はどうだった?」とか「次はどんなことがしてしたい?」と本人の意見を直接聞ければ、今後の計画を立てるときのヒントになります。
万が一子どもがじっとして居られず話し合いに苦痛を感じるのであれば、無理に参加させる必要はありません。しかし可能な範囲で自分の計画に関する話し合いに参加させることは、なによりもその子の成長に繋がっている気がするのです。
まずは事業所内で計画が出来たかどうかを話し合い、スタッフから出た「こうした方がいいのでは?」という案を基に、本人や保護者の方も交えて二段階でモニタリングを行う形が理想的かもしれません。
おうちでも目標に向けて取り組みたいと考えている、前向きな保護者の方は多くいらっしゃいます。そうした中でも、他のご家族のこともあり、忙しくて思うようにできないと感じている方も大勢いらっしゃいます。
そうした保護者の方がいれば「施設でこういうことが出来ましたが、おうちでこういうことはチャレンジできますか?」と聞いてみて、そこまでできないと言われたら「じゃあこちらでもおうちで出来る方法を考えてみますね。」と提案してあげると良いです。
忙しい中でも実践できそうな簡単な方法を一緒に考えてあげることで、ご家族との関係も深まります。
また忙しくて手が回らないケースでは、連絡帳などに家での様子を記録するにも忙しくて書いている暇がない、という方も多くいらっしゃいます。
常に忙しく過ごしていて、それほど時間がないお母さんに「どうしても書いてください」と促すのは酷なので、そのようなときは定期的に面談をする方法でフォローしましょう。他にも、お子さんのいない時間帯などタイミングのいい時に5分でも10分でもいいから電話をかけてあげる、という方法も有効的です。
そうやってなるべく負担の少ない方法で、忙しいお母さんをフォローしてあげて欲しいです。
個別支援計画は、家でちゃんと出来てご家族によかったと思ってもらえないと意味がありません。家で出来る、だから外や学校でも出来る、というのが本当の意味での目標達成ですよね。
だからこそモニタリングで本人やお母さんの様子をきちんと見て、「施設では出来るようになりましたがおうちでは大丈夫ですか?」と聞いてみてください。
施設で過ごす時間も大切ですが、おうちでの取り組み方にも気を配ってあげることが、その子をより理解してモニタリングする上でのポイントになるのかもしれません。
私が個別支援計画にアドバイスをする際は、短期・長期の目標と総合的な支援方針に対して、〈できた〉〈できなかった〉〈その理由〉を書いてもらうようにしています。
〈できた〉にしろ〈できなかった〉にしろ、必ず理由があるはずです。「なぜできなかったのか?」という理由を考えない限り、いつまで経ってもその子の目線や家族の目線には絶対になれません。
何より理由が分かっていれば次にどうすればいいのかも明確になり、計画を見直すときに提案もしやすくなりますよね。
それと同様に気にかけて欲しいのは、「何が変わったのか?変わらなかったのか?」という部分です。常日頃から目を離さないように、誰かしらがその子を見ていれば、ちょっとした変化にも気付けます。「いつもはあのエリアに行かないのに今日は行った」という些細なことでも、モニタリングの際に計画を見直す材料になったり、本人との向き合い方を考える機会になったりします。
変化は、本人だけでなくお母さんの方も重要です。
私の場合、お母さんが普段のように目線を合わせたときにパッと逸らすような様子があれば、特に気にかけていました。明らかに疲れている、あまり目を見て話さない、というときは、明らかに何かあることが多かったように思います。そういうときは電話で都合を確認して面談に行くなど、すぐに対処することを心掛けていました。
お母さんがお迎えにきたときに「今日一日のことを伝える」ことももちろん大切ですが、目線やしぐさを気にかけてあげることも非常に重要です。送迎スタッフ、迎え入れたときの対応をしたスタッフ、携わる全員が一丸となって意識することを徹底していきましょう。
子ども達はどんどんアップデートされていくため、モニタリングも日々の積み重ねが大事です。
こうした支援活動は、子どもの成長を思ってやっているつもりでも、いつしか必ず支援者である自分自身の成長にも繋がっています。そしてその支援者の成長が、また新たな子どもの成長へと繋がっていくのです。
モニタリングや日常の支援で出来ることを常にアップデートしていき、みんなで共に成長することを目指していきたいですね。
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